不動産登記手続きの概要(ちょいムズ)

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不動産登記手続の概要について

不動産登記はなぜ必要なの?

不動産について、売買により所有者になった、住宅ローンの設定により抵当権を付けた又はローンの完済により抵当権が消滅したなどの事実は、当事者の間ではその事実を知っていますが、当事者以外の第三者はその事実を知ることができません。

これでは、高額であることが多い不動産取引の安全を図ることができないとして、不動産に関する情報は公開することが原則とされました。

不動産の情報の公開にあたっては、法務局という国家機関を設け、土地と建物の1個(一筆ともいいます)ごとに、土地の所在地番、地目、地積、建物の家屋番号、種類、構造、床面積を記載した表題部、所有者を記載した権利部甲区、抵当権など所有権以外の権利を記載した権利部乙区の3つの記録を一つにした登記記録という電子データで管理しており、誰でも手数料を納付すれば、不動産に関する証明書の請求や閲覧をすることができるようになっています。

「自分の不動産の情報が他人に公開されているなんて不安だ」と思う方もいるかもしれません。
登記記録を閲覧し、不動産取引に関するデータをもとに営業を行っている業者も実際に存在しますし、個人の情報は慎重に取り扱う必要があると思います。
その一方で、自分が不動産を購入する場合などは、国家機関がその不動産に関する情報を証明してくれる方が安心して取引できませんか?

また、購入しようとしている土地が、以前は田畑であったとか、山林であったとか、建物は何年築であるというような不動産の履歴を自分で調べることができますので、「前は田んぼだったけど地盤は大丈夫なのかな?、山林ということは元々は斜面だったのかな?」など、不動産購入の判断材料にすることもできます。

法務局の審査は厳格に行われます

先のとおり、第三者に不動産の状況や権利の情報を公示し、取引の安全に資するのが不動産登記の目的ですから、虚偽の内容が申請・公開されないように申請当事者や、添付書類について規定し、法務局の審査に通って初めて登記記録に登載されることになっています。

申請は当事者が共同して行う必要があります

不動産に関する権利を得る人を登記権利者、不動産の権利を失う又は不動産に何かの権利を付けられる人を登記義務者といい、登記権利者と登記義務者が、共同で登記申請手続きをする必要があります(共同申請といいます)。

例1)売買による登記は、買主は土地の所有という権利を得るので登記権利者、売主は土地の所有を失うので登記義務者

例2)抵当権を付けると、銀行は抵当権という権利を不動産に付けたので権利者、不動産の所有者は抵当権という権利を土地に付けられたので登記義務者

もし、当事者の一方が登記手続きに協力しない場合は登記はできませんので、裁判で判決などを得る必要があります。

例)「土地をもらったから、自分の名義に変更したいんだけど。」と一人で法務局に行っても手続きはできません!

添付書類が厳格に定められています

添付書類は、登記義務者と、登記権利者によって異なります。

登記義務者は、不動産の権利を失ったり、権利を付けられたりするわけですから、権利証印鑑証明書など本人以外は所持または取得できない書類が必要になります。

登記権利者は、存在しない人や会社が登記記録に登載されないように、住民票会社の登記情報が必要になりますが、印鑑証明書などは必要ありません。

登記するしないは自由?

ところで、登記申請は表題部の登記を除いて、登記するかしないかは当事者の自由です。

登記をする場合、登記の内容は公開されるため厳格に審査しますが、登記はしなくても構いませんという制度です。

しかし、登記をしなければ、第三者に自分が所有者ですという権利を主張できない、つまり対抗力を得ることができないという不利益があります。

相続登記は共同申請の例外!

不動産登記は、不動産の情報を正確に公示するために、当事者双方が申請人になる必要があります(共同申請といいます。)が、相続による名義変更登記は相続人が、住所や氏名の変更などの登記は、住所や氏名を変更した不動産の所有者が単独で申請します。

共同申請では、対抗力が得られないと困る買主などの相手方が登記を求めるので、登記をしないということはほぼありませんが、単独申請の場合は、長期間登記されないものが数多くあります。

その結果、法務省によれば、相続による名義変更登記がされていない土地の合計面積は、九州の大きさくらいになっており、今後も増えると予想されています。

しかし、いつまでもその状態を放置できないとして、相続登記の義務化が令和6年4月1日から住所氏名の変更登記は令和8年4月1日から開始されることになっています。

相続により所有することになった方は、速やかに登記手続きをしましょう。

不動産登記に関するQ&A

不動産登記申請の必要書類はどのようなものですか?

不動産登記に必要な書類は、不動産登記法などの関係法令により定められていますが、不動産の状況、申請の種類、当事者の現在の住所状況などに応じて異なってきます。

主なものとしては、権利証、登記の原因となった事実を記載した書面、印鑑証明書、住民票などになります。

登記申請手続きに必要な書類に有効期限はありますか?

印鑑登録証明書と官公署の証明年月日の記載のある資格証明書は、登記申請日前3か月以内という有効期限の定めがあります。
戸籍や住民票には有効期限の定めがありませんので、前に取得していたものでも現在と内容が同じであれば使用できます。

権利証を紛失しましたが再発行できますか?

権利証の再発行はできません!
登記申請で権利証が必要になった場合は、権利証に代えて司法書士が作成した本人確認情報を用いることが一般的です。

権利証を添付せずに申請し、法務局の事前通知制度という手続きを用いる方法もありますが、登記義務者が法務局からの通知を期限(2週間)内に法務局に届け出ないと登記申請が却下になるというリスクがあります。

不動産登記申請は自分でも可能ですか?

法務局のホームページを参考に、登記権利者及び登記義務者で必要書類を作成し、法務局に提出することによって登記手続はご自身ですることも可能です。

しかし、登記手続は申請書を作成すればよい訳ではなく、権利証や印鑑証明書等の書類の準備や登記の原因となった事実を記載した書面の作成、登録免許税の計算、法務局に申請した後の補正対応、権利証等の完了書類の正確な受領、保存を行う必要があります。

また、法務局は、登記申請手続きの内容が適正か否かを審査する行政庁ですから、一般的な内容の説明以外はできませんので、登記が終わったけど1筆申請が漏れていた、想定していたものと違う登記がされてしまったなどというリスクがあります。

司法書士ではない者が「代わりに申請書を作成してくれる」とのことですが

司法書士以外の方が代理して、書類の作成や代理申請を行うと司法書士法違反で罰せられます(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。
司法書士以外の者による申請は、司法書士会が調査、告発していますのでご注意ください。
また、登記手続きにより損害が発生した場合、司法書士以外の者が行った手続きには何の保険も適用されませんから、全額自己負担になりますのでご注意ください。

まとめ

大事な手続きですから、後で「やっぱり撤回します!」などということは法務局は容易に認めてはくれませんし、「とりあえず登記した」には、将来発生するトラブルが潜んでいるかもしれません。

不動産登記手続きの申請書や添付書面の作成、法務局への申請を業務として行うことができる試験に合格した国家資格者が司法書士です。

司法書士以外の方が代理して、書類の作成や代理申請を行うと司法書士法違反で罰せられます。(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)

不動産手続きのことは司法書士に一度相談してみましょう。

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