みなし解散の登記がされた会社の手続きについて

目次

こんなお困りごとありませんか?

法務局で会社の印鑑証明書が取得できなかったため、その理由を聞いたところ「みなし解散の登記がされている。」とのこと。

印鑑証明書が取得できるようにするためには、会社の継続の登記が必要とのこと。

では、みなし解散の登記とはどのようなものか、また会社の印鑑証明書が再び取得できるようにするためには、どのような手続きが必要になるのでしょうかについて解説します。

みなし解散の登記とはどんな制度?

みなし解散の登記とは、法務局が実体のない会社を整理する目的で、一定期間以上登記がされていない会社や法人の登記簿に職権で解散登記を行う制度です。

みなし解散の登記にあたって、毎年10月になると法務局は一定期間登記を行っていない会社に対し「事業を廃止していないか」を確認するため、官報公告を行い、確認の対象となった株式会社や法人に対しては各別に通知書を送付します。
※一定期間とは、株式会社については12年以上、一般社団・財団法人については5年以上です。
有限会社はこの対象に含まれていません。

対象となった株式会社や法人は、通知が届いてから2か月内に法務局に対し「事業を廃止していない旨」の届出を行う必要があり、これを行わないと職権で解散の登記がされます。

つまり、実体のない会社を整理する目的で、一定期間何らの登記もされていない株式会社や法人の登記簿に法務局が職権で解散の登記を行うのが、みなし解散登記の制度です。
※事業を廃止していない旨の届出を行うと、みなし解散の登記はされませんが、役員変更登記がされていない状態に変わりはありませんので、速やかに登記手続きすることをおすすめします。

株式会社や一般社団・財団法人では、定期的に役員の変更登記が必要です

法律上、株式会社では最長10年、一般社団・財団法人では最長3年という役員の任期の定めがあります。

任期が満了すると法務局で役員変更の登記が必要になります。
同じ方が引き続き役員となった場合でも、法務局で役員変更の登記を行う必要があります。

法務局に役員変更の登記申請を行わないまま一定期間が経過すると、法務局は「事業を行っていない会社なのでは?」と判断して、みなし解散登記手続きの対象会社・法人とします。

みなし解散登記に至るまでの流れ

みなし解散の登記対象となった株式会社または一般社団・財団法人には、法務局から事業を廃止していない旨の確認をするための通知書が届きます。

事業を廃止していない場合は、期限日までにその旨の届出を行わないと、登記簿にみなし解散の登記がされます。

みなし解散登記に至る手までの流れは次のようになります。
※株式会社の例を説明します。

STEP
法務局からの通知書の到達

法務局から「事業を廃止していない旨を届出る」ための通知書が届きます。
※本店移転登記申請を行っていない等の理由で、通知が到達しないような場合も適用がされますので、本店移転の登記を行っていない会社は注意が必要です。

STEP
自社の状況に応じて必要な手続きを行う

事業を廃止している場合と廃止していない場合で、通知書に対する対応には次のような違いがあります。

なお、届出を行う場合は書面による必要があり、代表取締役の名前で行うことになります。

STEP
何も届出なければ、職権による解散登記がされます

事業を廃止していれば、期限日の翌日付で職権で解散登記がされます。

STEP
清算人の選任及び清算手続きを行います

清算人の選任登記を行い、清算手続き終了後には清算結了の登記をします。
なお、解散状態のまま10年が経過すると職権で登記簿が閉鎖されます。

会社が再度事業を行えるようになるための手続きの流れ

期限日までに届出や役員変更の登記申請を行わなかったために、みなし解散の登記がされてしまった場合、再び事業を行えるようにするためには、次の手続きが必要になります。
※みなし解散は職権で登記がされますが、ここからの手続きは会社で登記申請を行ってする必要があります。

STEP
法定清算人の就任の登記申請を行う

みなし解散の登記がされた場合は、会社の継続および役員変更の登記が必要になりますが、前提として法定清算人の就任登記が必要になります。

法定清算人には、定款に定めがある場合を除いて、みなし解散時の取締役全員がなります。

なお、取締役がすでにお亡くなりになったりまたは辞任していた場合は、あわせて役員変更の登記が必要になります。

STEP
会社の継続及び役員変更登記を行う

会社継続および役員変更の登記を行います。

STEP
裁判所から過料処分の通知がされます

速やかに法定清算人の就任及び会社継続の登記を行っても、法務局から通知が来た時点で役員の登記または選任の懈怠という過料処分事由が発生しています。

現在の代表取締役あてに裁判所から過料処分が通知されます。

法定清算人の就任、会社継続及び役員変更登記手続きについて

法定清算人就任の登記手続きについて

みなし解散の登記がされた会社では、定款に別段の定めがある場合を除いて、解散時の会社の取締役が法定清算人になるため、元取締役を法定清算人とする就任登記を会社継続の登記の前提として行う必要があります。

法定清算人就任の登記手続きに必要な書類

  1. 登記申請書
  2. 会社定款
  3. 清算人の印鑑届書(清算人にかかる3か月以内の市区町村長作成の印鑑証明書が必要になります。)

※株主総会議事録等は必要ありませんが、定款が見当たらない場合は、定款の再交付または別途作成する必要があります。
※みなし解散登記のされた日までに、取締役や代表取締役が退任、死亡などにより変更している場合には、当該役員の変更登記が必要になります。

会社継続の登記について

みなし解散状態から事業を行えるようにするためには、会社継続及び役員変更の登記をあわせて行う必要があります。

株主総会の開催による会社継続及び役員の選任決議

  • みなし解散の日から3年以内に、株主総会の特別決議(議決権を行使できる過半数の株主が出席し、出席した株主の3分の2以上の多数をもって行う決議)で会社継続の旨を決議します。
  • みなし解散にあたって、役員は全員退任したものとされていますので、株主総会の普通決議(議決権を行使できる過半数の株主が出席し、出席した株主の過半数のをもって行う決議)で、取締役を選任する必要があります。
    株主総会または定款の定めによる取締役の互選、取締役会で代表取締役も選定します。
  • 取締役、代表取締役が就任承諾を行います。

登記手続きに必要な添付書類

  1. 会社継続および役員選任について決議した株主総会議事録(特別決議)
  2. 株主の住所、氏名、持株数を記載した証明書
  3. 取締役会設置会社の場合は、代表取締役を選任した取締役会議事録
  4. 取締役及び代表取締役の就任承諾書(役員全員実印の押印が必要な場合あり)
  5. 取締役個人の印鑑証明書(3か月以内のもの)

株式会社の場合は、会社の体制を見直してみませんか?

貴社が株式会社の場合、少なくとも12年間は会社の体制の変更をされていなかったと思います。
会社継続および役員変更の登記にあわせて、取締役会の必要性、役員の任期や監査役の業務権限、株式の種類などについて会社の体制を見直し、必要な変更登記を一緒に行いませんか?

取締役会の廃止

株式の全部に譲渡制限の定めがある株式会社の場合、取締役会を置かないこととする変更登記が可能です。
ただし、株式の譲渡の承認機関を「取締役会」から代表取締役や株主総会に変更する必要がありますので、「株式譲渡制限に関する規定」に関する変更登記手続きも必要になります。
※株式の譲渡の承認機関の変更には、別途登録免許税が必要になります。

監査役の廃止・権限の変更

監査役を置いていた会社が会社継続および役員変更にかかる株主総会時に決議をすることによって、監査役を廃止することも可能です。また、業務監査権限を有している監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する変更も可能です。
※株式の全部に譲渡制限の定めがあることが前提になります。
※監査役を廃止する場合は、登録免許税が必要になります。

事業目的等の変更

会社継続および役員変更の株主総会時に決議することによって、会社の目的、公告方法などについても見直し、変 更登記をすることが可能です。

みなし解散の登記に関するQ&A

法務局から事業を廃止していない旨の確認の通知が来ました、どうしたらよいですか

事業を廃止していなければ、通知日から2か月以内の期限日までに、通知書の「届出書」部分に記載のうえ押印して、法務局に書面で届出る必要があります。
※会社の実印で押印する必要まではありません。

法務局への事業を廃止していない旨の届出をしたいですが、代表取締役が亡くなっています。誰が届け出ればよいですか

登記されている代表取締役が死亡している場合は、届出る代わりに役員変更の登記を期限日までに行うことによって、みなし解散登記はされませんので、届出は不要になります。

法務局へ事業を廃止していない旨の届出を行いました。役員変更の登記は行わなくても大丈夫ですか?

届出をした場合でも、役員変更などの登記を行わないでいると、翌年またみなし解散の対象になりますので、すみやかに役員変更の登記申請を行う必要があります。

法務局に事業を廃止していない旨の届出をしたいのですが、代表取締役の住所が登記簿上の住所から変更している場合、届出はどうしたらよいでしょうか?

届出る代わりに役員変更の登記を届出の期限までに行うことによって、みなし解散登記はされませんので、届出は不要になります。

期限日までに事業を廃止していない旨の届出をましたが、裁判所から過料通知が来ました

会社の登記は、登記事項に変更が生じてから2週間以内に行う必要があります。
法務局から通知が来たということは、最低でも2年間は登記を懈怠していることになりますので、届出を行っても過料を免れることはできません。

みなし解散の登記がされた会社は登記簿を確認すればわかりますか?

みなし解散の対象となった会社には、「役員に関する事項」欄の取締役及び代表取締役全員に下線が引かれ、「解散」欄に令和〇年〇月〇日会社法第472条第1項の規定により解散と記載されていますので、登記簿を確認すればわかります。

法定清算人の登記にあたって定款が見当たりませんが、再交付してもらえますか?

会社設立から20年間は、定款の認証を受けた公証役場で再交付を受けることができます。
しかし、20年を超えている場合は、残念ながら再交付を受けることはできません。
※あくまでも設立時の定款ですので、その後に定款の内容を株主総会の決議で変更した場合は、その際の株主総会議事録がないと変更箇所がわかりません。

当事務所の法定清算人就任・会社継続の登記手続きサポート

  • 法定清算人の手続きに必要な申請書、添付書類を作成、迅速に登記手続きを行います。
    ※会社実印と代表者個人の印鑑証明書(新しく交付を受けたもの)をご用意願います。
  • 会社継続手続きに必要な登記申請書、添付書類である株主総会議事録、就任承諾書などの作成サポートを行います。
    また、これまでの会社組織等の見直しのサポート及び変更登記手続きを行います。
  • 設立時からの定款を、会社組織の見直しにあわせて、再度整備するサポートを行います。

法定清算人選任及び会社継続登記にかかる費用について

会社継続登記手続きの費用

当事務所にご依頼いただいた場合の、法定清算人就任の登記、会社継続の登記、取締役及び代表取締役の就任の登記、株主総会議事録の作成、新代表取締役の印鑑届書の提出費用
74,400円(税込み)
※取締役の皆様の印鑑証明書をご用意ください。
※さらに、登録免許税、登記事項証明書代など、法務局に納める費用が約50,000円になります。
※株式の譲渡制限に関する規定などの変更登記をあわせて行う場合は、当該事項に関する費用及び登録免許税が加算されます。

会社継続にあわせて、定款整備や会社組織の見直しを行う場合の費用

会社継続の登記にあわせて、定款の整備や会社組織の見直しを行う場合には、次の費用が追加になります。

定款整備33,000円(費用)
取締役会の設置13,200円(費用)30,000円(登録免許税)

業務内容 費用 登録免許税等
法定清算人の就任 ¥11,000 ¥9,000
会社継続の登記 ¥13,200 ¥30,000
役員変更登記 ¥13,200 ¥10,000
(資本金1億円以上の場合) ¥30,000
議事録作成サポート ¥22,000
印鑑届出書作成 ¥11,000
登記事項証明書取得 ¥500 ¥600
印鑑証明書取得 ¥500 ¥450
郵送料 ¥3,000
合計 ¥74,400 ¥50,050
(資本金1億円以上の場合) ¥70,050
定款整備や会社組織の見直しを行う場合の登記 費用 登録免許税
取締役会設置会社の定め ¥13,200 ¥30,000
株式の譲渡制限に関する規定の変更 ¥13,200 ¥30,000
定款整備 ¥33,000
3年以上の経過 ご相談

まとめ

株式会社の取締役の任期は最長でも10年です! 同じ方が役員を継続している場合も役員変更の登記は必要になります。

事業を廃止していない旨の届出を行っても、役員変更の登記を行う必要があります。

みなし解散の登記がされた場合には、法定清算人就任の登記と会社継続の登記をしないと再び事業を行うことはできません。

法務局から通知に対し届出または役員変更の登記を行った時点で、裁判所の過料処分の対象となっています。

取締役など役員の任期が長期間放置されていないか、登記事項証明書を取得して確認しましょう。

手続きでお困りでしたら、当事務所が迅速にサポートいたします。

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