遺産分割協議書の作成方法について

民法の規定により、不動産や現金などの遺産は法定相続分の割合で分割、または相続人全員の共有となるのが原則です。

しかし、実際には遺産分割協議を行い、法定相続分と異なる割合で相続をすることが多いです。

この場合、手続きにあたって、遺産分割協議書の作成が必要になります。

本ページでは、遺産分割協議書の作成の流れついて解説します。

目次

遺産分割協議書の作成
が必要になるケース

次のような場合は、遺産分割協議書の作成が必要です。

  • 法定相続分と異なる割合で相続する遺産が一つでもある場合
  • 不動産や車など、相続人の一人に相続させた方が良い遺産がある場合

遺産分割協議の内容は、書面にしなくても効力を生じます。

しかし、法務局や金融機関において相続の手続を行う場合は、遺産分割協議書を作成する必要があります。

※遺産をどう分割したか明らかにしておくためにも、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。

遺産分割協議書作成までの流れ

遺産分割協議書の作成にあたっては、次のような流れで準備を進めていきます。

STEP
被相続人や相続人全員の戸籍を収集して、相続人を確認・確定します

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要がありますので、相続人の確認は重要です。

相続人の一部でした遺産分割協議は無効です。

STEP
遺産分割協議の対象となる相続財産を調査します。

不動産は権利証、名寄帳、固定資産税明細書、銀行預金は通帳、残高証明書を用いて相続財産を確認します。

負債額が不明な場合は、信用情報機関を利用して調査します。

STEP
相続人ごとに相続する財産を決めます

生前に受け取っていた財産、葬儀に要した費用や登記、相続税申告に要する費用なども考慮しながら相続人全員の協議により定めます。

STEP
相続人全員で、遺産分割協議書を作成します

遺産分割協議の内容に基づき、作成した遺産分割協議書には、相続人全員で住所、氏名を記載し実印を押印します。

※遺産の記載を忘れたり、記載を誤ったりすると、再度遺産分割協議書の作成が必要になることもあります。

遺産の分割方法

遺産分割協議において、遺産の分割はおもに次の方法により行ないます。

分割方法は、遺産の内容や相続人の希望により使い分けることになります。

現物分割

不動産、預貯金や有価証券などの遺産を、個々に直接分割して相続する方法です。

例えば不動産は分筆し、預貯金は法定相続分で分割して相続するという場合がこれにあたります。

不動産を公平に分けるのは難しい場合が多いです。

代償分割

不動産を単独で相続することとなった相続人が、他の相続人に対して、法定相続分を超える差額を自分の財産などから現金で支払う方法です。

この現金のことを代償金といいます。

代償金の支払い方法は、借り入れして用意する、分割払いにするなどがあります。

換価分割

不動産など、容易に分割できない遺産は売却して現金に換え、その残金を分割する方法です。

代表相続人を決めて、不動産を一旦その相続人名義に相続登記したうえで売却をすることが一般的です。

ただし、売却には時間がかかるうえ、希望する価格では売れない、税金関係の手続きが複雑になるというリスクがあります。

遺産分割協議書に記載する内容

分割方法も決まりましたら、遺産分割協議書には次の事項を正確に記載のうえ作成します。

  1. 被相続人を特定するための、本籍、最後の住所、氏名、生年月日および死亡年月日
  2. 遺産分割の対象となる遺産、遺産を取得する相続人の氏名や持分などの遺産の分け方
    ※不動産は登記簿記載のとおり、預貯金は金融機関・支店・預金の種類・口座番号を正確に記載する必要があります。

  3. 相続人で全員の合意で協議が成立した旨の記載、協議が成立した年月日

  4. 相続人全員の住所、氏名、押印(実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。)
    印影が不鮮明、重なっている場合などは、作り直しのリスクがあります。
    なお、家庭裁判所に相続放棄の申述をした相続人はここに含まれません。

インターネットなどで遺産分割協議書のひな形を調べることもできますが、財産の内容や分割の方法は相続のケースごとに異なりますので、ご自身の相続に合ったひな型は見当たらないかもしれません。

遺産分割協議書に必要な
契印、割印について

遺産分割協議書を作成したところ、遺産分割協議書が数枚になってしまったという場合は、契印を行う必要があります。

契印は、一般的には綴り目の見開き箇所に相続人全員で押印する方法で行います。

遺産分割協議書を袋とじで作成した場合は、袋とじの部分の表面・裏面に押印する方法で行います。

契印を行わないと、法務局や金融機関では遺産分割協議書として使用できませんので注意しましょう。

遺産分割協議書を相続人の人数分作成した場合、すべての遺産分割協議書を重ねて、相続人全員で割印を行っても構いません(契印と異なり、割印はなくても遺産分割協議書としての効力に問題はありません。)

遺産分割協議書作成に関するQ&A

遺産分割協議書は何通作成する必要がありますか?

作成する遺産分割協議書は1通でも構いませんが、なるべく相続人の人数分を作成し、各人で一部ずつ保管するようにしましょう。

遺産分割協議書には必ず実印を押印する必要がありますか?

遺産分割協議書には必ず実印を印影が鮮明なるよう押印する必要があります。

遺産分割協議書に印鑑を押印する代わりに拇印することはできません。

実印の登録をされていない場合は、住所地の市区町村役場で印鑑登録を行う必要があります。

なお、遺産分割協議書に実印の押印を拒む相続人がいる場合は、裁判上の手続きが必要になります。

遺産分割協議書に添付する印鑑証明書の有効期限はありますか?

法務局に提出する場合、印鑑証明書の有効期限はありませんが、遺産分割協議書作成日前3か月以内のものを添付するのが望ましいです。

なお、金融機関における相続手続きでは、印鑑証明書の有効期限を、相続手続き書類の提出日前3から6か月以内と定めていることが多いです。

金融機関の相続手続きにあたっては、印鑑証明書の有効期限に注意しましょう。

相続人に成年被後見人がいますが、遺産分割協議はできますか?

成年被後見人は、遺産分割協議を行うことができません。

成年被後見人の代わりに家庭裁判所で選任された成年後見人が遺産分割協議に参加し署名、押印する必要があります。

なお、成年後見人が相続人でもある場合は、家庭裁判所で選任された特別代理人が署名、押印を行う必要があります。

海外に住んでいる相続人(日本国籍)がいますが、印鑑証明書はどうしたらよいですか?

日本に住民登録がない方は、印鑑証明書を取得することができませんので、現地の日本領事館で署名及び拇印の証明書を取得する必要があります。 

遺産分割協議書には、上記証明書に書いたとおりの字体でサインをし、拇印をします。

遺産分割協議書の作成後に記載誤りを見つけました、訂正は可能ですか? 

遺産分割協書は、相続人全員の実印で訂正印を押印する方法により訂正できます。

相続人全員の訂正印を文字の記載がない遺産分割協議書上部余白部分に押印して、印付近に〇字削除、◯字加入など文字数を記載します。

しかし、後日の争い防止のためにも、なるべく正しい記載の遺産分割協議書を作成し直すことをお勧めします。

遺産分割協議をやり直すことはできますか?

遺産分割協議は、一度取り消したうえで再度協議することにより、やり直すことができます。

しかし、取消前の遺産分割協書に基づき不動産の名義変更登記が完了している場合は、一度名義変更の登記を抹消したうえで、改めて名義変更変更登記申請する必要があります。

上記手続きは複雑なうえ、登記費用も二重にかかってしまうため、遺産分割協議書の作成は、分割する遺産の内容や負担する税金等も踏まえて慎重に行う必要があります。

遺産分割協議書を作成した後に新たな財産が発見された場合はどうしたらよいですか?

遺産分割協議書に新たな財産が発見された際の取り決めを記載しておくことができます。

遺産分割協議書に新たな財産が発見されて際の取り決めに関する記載がない場合は、その財産のために遺産分割協議書を作成する必要があります。

新たな財産が見つかると、一度整った遺産分割協議にも影響を及ぼすことがあるため、財産の調査や遺産分割協議は慎重に行う必要があります。

遺産分割協議書の作成はどこに依頼するのがよいですか?

遺産分割協議書の作成は、争いの有無や、財産の内容で異なります。

相続人同士の間で争いがあり遺産分割協議ができない場合は、訴訟を経て分割内容を定める必要がありますので、弁護士に依頼することになります。

遺産に不動産がある場合は、司法書士に依頼することになります。

遺産に車がある方は行政書士に依頼することになります。

遺産分割協議書作成上の注意点

遺産分割協議書の作成にあたっては、次のような点に注意しましょう。

  • 遺産分割協議書の遺産の記載に誤りや、あいまいな点があると、相続手続きの際に遺産分割協議書として使用できなかったり、後日、争いに発展する可能性があります。
  • 遺産分割協議内容の記載の仕方によっては、贈与とみなされて贈与税がかかってしまうというリスクがあります。
  • 遺産分割協議を作成しても、実印ではない印による押印、印影が不鮮明、契印の方法に誤りがある場合は、法務局や金融機関で使用できない可能性があります。

まとめ

全ての財産を法定相続分で相続する場合や、他の相続人全員が相続放棄するなどにより、相続人が1人の場合以外は、遺産分割協議書の作成が必要です。

遺産分割協議書の作成は、相続人全員で行う必要があり、相続人の一部で作成した遺産分割協議書は無効です。

遺産分割協議書の作成にあたっては、後のトラブルの防止や相続手続きをスムーズ進めるためにも、内容を正確に記載し、契印などの押印を正しい方法で行う必要があります。

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